坂入健司郎×大阪交響楽団
ブラームス交響曲全曲演奏会 Vol.2
「身近なホール」に編集部が行ってみた!【前編】
text by 八木宏之&原典子
photo by 原典子
変化のときを迎える箕面の暮らしと文化
八木:2023年4月28日に大阪の箕面市立メイプルホールで行われた坂入健司郎さんと大阪交響楽団の『ブラームス交響曲全曲演奏会』第2回公演へ、編集部のふたりで行ってきました!
八木宏之 FREUDE編集人。音楽評論家。東京、愛知、パリで音楽学を学ぶ。主なフィールドはベルリオーズをはじめとする19世紀フランス音楽。指揮者の坂入健司郎とは旧知の仲。
原典子 FREUDE編集人。音楽雑誌の元編集者でありライター。雑食系リスナー。趣味はひとり旅だが、育児生活のなかでまったくできないのが悩み。
原:FREUDEでメイプルホールの記事をお届けするのって、これで何回目でしたっけ? いろいろな記事を作ってきましたよね。
八木:昨年の春からメイプルホールのさまざまな取り組みを取材し、お伝えしてきました。今回でもう7回目ですね。
原:お恥ずかしながら、最初は「箕面(みのお)」ってなんて読むのかわからなかったのですが、そろそろ皆さんの間でも「箕面」という地名が浸透してきたのではないでしょうか。
八木:箕面は関西の人にはお馴染みの地名だと、奈良出身の妻が話していました。
原:「メイプルホールでなんか面白いことやってるな」と、なんとなく気になってる方々もいらっしゃると思います。
八木:原さんは今回が箕面初訪問ですか?
原:はい、初めてでした。でも大阪梅田から阪急線の宝塚行きに乗るルートは何度か経験してまして……そう、宝塚大劇場に遠征するときに乗るんですね。なので、初めてという感じがしませんでした。箕面と宝塚は阪急線で30分弱という近距離。しかも宝塚は13時開演のステージもあるので、まずヅカを見てから19時開演のメイプルホールの公演をハシゴ、なんてこともできるんです!
八木:原さんは宝塚ファンですもんね。宝塚は兵庫県なので、箕面からは遠いイメージがありましたが、実はそんなにアクセスが良いのですね。
原:そうなんです!! あ……ついアツくなってしまいましたが、初めて訪れる街はまず探検ということで箕面駅前をブラブラ。懐かしい感じのする商店街で美味しい定食屋さんを発見したり、箕面市立郷土資料館の展示を見たり。八木さんは、箕面駅からではないルートで向かったそうですね?
八木:私は今回が4回目の箕面訪問だったのですが、最近は、新大阪駅から大阪メトロ御堂筋線で終点の千里中央駅まで行き、そこからバスに乗ってホールへ向かうのがお気に入りです。千里中央駅には、カフェやレストランが入った商業施設があって、たくさんの親子連れを見かけます。箕面市は閑静な住宅街と聞いていましたが、若いエネルギーも感じられる、活気のある街ですね。御堂筋線と北大阪急行線が延伸して、2024年春には箕面萱野駅まで直通運転を開始するので、大阪中心部からのアクセスがますます良くなって、箕面市はさらに元気になっていきそうです。
原:なるほど、千里中央駅からバス。次回はそちらのルートを試してみます! 千里中央駅から大阪モノレールで2駅の万博記念公園には「太陽の塔」もありますね。
八木:千里中央駅と箕面萱野駅の間に設置される新駅、箕面船場阪大前駅は、2021年にオープンした箕面市立文化芸能劇場(座席数1401席)に直結するとのことですので、箕面の音楽シーンはこれから活発になっていくと思います。そうしたなかで、これまで箕面市の音楽文化の中心を担ってきたメイプルホールの役割も重要度を増していきそうです。市立図書館と生涯学習センターが併設されているメイプルホールは、市民の文化生活の拠点にもなっています。
原:箕面駅からメイプルホールまでは徒歩7〜8分でしたが、駅前の賑わいを抜け、緑豊かで閑静な住宅地のなかに、大阪交響楽団のトラックが目に入ったので、すぐに「着いた!」とわかりました。
ホールにいらっしゃる方々は落ち着いた雰囲気ですね。『身近なホールのクラシック』はメイプルホールの人気シリーズですが、文化的に豊かな地域に住む、知的好奇心旺盛な方々にぴったりフィットした企画なのだろうなと思いました。
攻める地域ホール
八木:『身近なホールのクラシック』には、コンサートだけでなく生涯学習講座もラインナップされていて、両者が密接に結びついているのが特徴です。
原:注目の若手評論家、布施砂丘彦さんの「箕面おんがく批評塾」も開講されていますね。
八木:FREUDEでインタビューした伊東信宏さんの『中欧音楽夜話』も人気講座です。坂入さんのブラームス・ツィクルスだけでなく、つい先日は尾池亜美さん、田代裕貴さん、安達真理さん、多井千洋さん、荒井結さん、伊東裕さんによる弦楽六重奏でコルンゴルトやシェーンベルクが取り上げられました。そのほかにも、北村朋幹さんのケージ、箏曲家の片岡リサさんと作曲家の桑原ゆうさんのコラボレーションなど、注目度の高い公演が多く開催されています。
原:なんか攻めてますよね!
八木:地域ホールのラインナップとしてはかなり攻めてますね。今回の『ブラームス・ツィクルス』では、坂入さんと聴衆の交流の場である「マエストロ・サロン」や、音楽評論家の奥田佳道さんのガイド付き「ゲネプロ見学会」など、さまざまな関連イベントが用意されています。私たちもお客さんと一緒にゲネプロを見学しました。参加していたお客さんは熱心な方ばかりでしたね。
原:ご高齢層が多かったですが、皆さんの熱量はすごかったですね。奥田さんのガイドを聞いて、ゲネプロを見学して、夜からは本番って、けっこうな体力勝負!
八木:坂入さんと大阪交響楽団のゲネプロは、本番前の心地よい緊張感に包まれていました。私は第1回演奏会のゲネプロにも参加しましたが、第2回では指揮者とオーケストラの関係が深まって、リラックスした雰囲気になっていたのがとても印象的でした。原さんはゲネプロを見学していかがでしたか?
原:第1回の八木さんのレポートを読んでいたので、ちょっとピリピリした感じのゲネプロになるのかな? なんて実はドキドキしてたんです。でもこの日は、坂入さんもオーケストラも、湧き出てくる音楽に自然体で身を任せていたように感じました。とはいえ要所要所で、坂入さんがオーケストラに提案をする場面もありましたね。
八木:坂入さんと大阪交響楽団が、第1回演奏会を経て、お互いに少しずつ信頼を築いているのがゲネプロから伝わってきました。奥田さんが、第2回演奏会では坂入さんのやりたいことをもっと打ち出してほしいと話していましたが、まさにその通りになっていたと思います。
後編へつづく
公演情報
《身近なホールのクラシック》ブラームス交響曲全曲演奏会 Vol.3
2023年10月27日(金)
箕面市立メイプルホール 大ホール坂入健司郎(指揮)
大阪交響楽団ブラームス:《ハイドンの主題による変奏曲》
ハイドン:交響曲第88番 ト長調《V字》
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調2023年6月30日(金)チケット一般発売開始
公演詳細:https://minoh-bunka.com/2023/05/27/20231027-brahms-symphonies/
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