- 2023年1月13日
さかしまのジゼル
<第15回>
第3部 I 仕組まれた契約──1840年
さかしまのジゼル <第15回> 第3部 I 仕組まれた契約──1840年 かげはら史帆 華奢な膝を折って床に泣き崩れるグリジを、ジュールはただただ呆然と見つめていた。 いったい何が起きたのか、すぐには呑み込めない。橙色に灯るテーブル […]
さかしまのジゼル <第15回> 第3部 I 仕組まれた契約──1840年 かげはら史帆 華奢な膝を折って床に泣き崩れるグリジを、ジュールはただただ呆然と見つめていた。 いったい何が起きたのか、すぐには呑み込めない。橙色に灯るテーブル […]
さかしまのジゼル <第14回> 第2部 VIII 最高のプレゼント かげはら史帆 「もし、あのまま悲劇で終わっていたら──」 芸術監督とメートル・ド・バレエの感嘆の声が、ジュールの耳を快く打った。 「ここまでのヒットはなかったでしょう […]
さかしまのジゼル <第13回> 第2部 VII さかしまのラ・シルフィード かげはら史帆 「俺はみにくい」 籐編みの揺りかごを片手で揺らしていたグリジが、ふっと顎を上げた。 「君は美しいのに、どうして、こんなみにくい男と一緒にいて、子どもまで作 […]
さかしまのジゼル <第12回> 第2部 VI 交渉決裂 かげはら史帆 「よく隠し通せましたね。記者どもはマドモアゼル・グリジの秘密に最後まで気づかなかった」 感嘆と呆れの入り混じったメートル・ド・バレエの声に、旅装のジュールは勝利の笑 […]
さかしまのジゼル <第11回> 第2部 V 男のシルフィード かげはら史帆 「俺が、振付を……?」 ジュールの口から、情けないほどにかすれた声が出る。目の前では、ウィーン・ケルントナートーア劇場の芸術監督カルロ・バロッキーノが、丸く赤 […]
さかしまのジゼル <第10回> 第2部 IV “踊るグリジ” かげはら史帆 泣くだろうな──。 そう思ったら、やっぱり泣いていた。 小さな頭に不釣り合いなほど大きな濃黄色のリボンが、力なく耳の下まで垂れ下がっている。 […]
さかしまのジゼル <第9回> 第2部 III 新しい契約 かげはら史帆 「この子を、パリ・オペラ座に……」 穏やかな波音が寄せる長テーブルを前に、勝機をつかんだジュールは泰然とうなずいた。 「わが家は歌手一族ですの」「イタリア・オペラ […]
さかしまのジゼル <第8回> 第2部 II 救いのミューズ かげはら史帆 「フランチェスカ、グラン・バットマンで身体を傾けすぎないで。アデライーデ、下ろした脚をきちんとポジションに収めて。ベルタ、肘がだんだん落ちてきてる。そう、それでい […]
さかしまのジゼル <第7回> 第2部 I 転落と流浪──1835年 かげはら史帆 冷たく湿った土の感触を片頬に感じながら、ジュールはやっとの思いで目を開けた。 幌つき四輪馬車カレーシュもろとも、崖の下まで転げ落ちてしまったかと思った […]
さかしまのジゼル <第6回> 第1部 V 俺はライバルになれない かげはら史帆 客席のどよめきが、ジュールの全身を快感に包んだ。 批評家たちが腕組みをする平土間席から、成金紳士たちが禿頭をずらりと並べるボックス席から、貧乏学生や芸術 […]
さかしまのジゼル <第5回> 第1部 IV オペラ座の女王 かげはら史帆 あのひとの足音だけは、すぐにわかる。 コツ、コツ、コツ。馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音だ。 女性ダンサーたちは、みんな彼女のスキルを盗もうと必死だ。彼女 […]
さかしまのジゼル <第4回> 第1部 III リヨンの家出少年 かげはら史帆 フランス南西部の街・ボルドーから、若い男性ダンサーが移籍してくる。 そんな噂を耳にしたのは、ジュールが10歳の頃だった。 そのダンサー──シャルル・マズ […]