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Novel

  • 2023年3月31日

さかしまのジゼル
<第20回>
第3部 VI さかしまの夜明け

さかしまのジゼル <第20回> 第3部 VI さかしまの夜明け かげはら史帆    おまえは、男だから──。  父親の声が、遠雷のように意識のかなたから響く。  威圧的なニュアンスはまったくなかった。むしろその声は、いまにも消え入りそうに弱 […]

  • 2023年3月17日

さかしまのジゼル
<第19回>
第3部 V オペラ座の新女王

さかしまのジゼル <第19回> 第3部 V オペラ座の新女王 かげはら史帆    コツ、コツ、コツ。  馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音──。    かつてマリー・タリオーニの象徴として畏れられていた足音。  その音でオペラ座を […]

  • 2023年2月24日

さかしまのジゼル
<第18回>
第3部 IV ジゼル、または群舞たち

さかしまのジゼル <第18回> 第3部 IV ジゼル、または群舞たち かげはら史帆    作曲家のアドルフ・アダンの顔色が、ページを繰るにつれてだんだんと変わっていくのを、ジュールは目の当たりにした。手にした台本の束が、興奮でわなわなと震え […]

  • 2023年2月10日

さかしまのジゼル
<第17回>
第3部 III  狂乱の振り写し

さかしまのジゼル <第17回> 第3部 III  狂乱の振り写し かげはら史帆   「彼女は完璧とはいえない。空中に飛翔するときでさえも、彼女は不安そうに周りを見回して、自分のそばにいてくれる人を探す。足りないのは彼女の主人であり師であるペロー、つま […]

  • 2023年1月27日

さかしまのジゼル
<第16回>
第3部 II  夢見る詩人

さかしまのジゼル <第16回> 第3部 II  夢見る詩人 かげはら史帆   「客が立ち入っていい時間帯じゃないはずだ」  男の短い右腕を引っ張って、背骨の近くまで力いっぱいひねりあげると、また悲鳴が上がった。小脇に抱えていた書類鞄とステッ […]

  • 2023年1月13日

さかしまのジゼル
<第15回>
第3部 I 仕組まれた契約──1840年

さかしまのジゼル <第15回> 第3部 I 仕組まれた契約──1840年 かげはら史帆    華奢な膝を折って床に泣き崩れるグリジを、ジュールはただただ呆然と見つめていた。  いったい何が起きたのか、すぐには呑み込めない。橙色に灯るテーブル […]

  • 2022年12月9日

さかしまのジゼル
<第14回>
第2部 VIII 最高のプレゼント

さかしまのジゼル <第14回> 第2部 VIII 最高のプレゼント かげはら史帆   「もし、あのまま悲劇で終わっていたら──」  芸術監督とメートル・ド・バレエの感嘆の声が、ジュールの耳を快く打った。 「ここまでのヒットはなかったでしょう […]

  • 2022年11月4日

さかしまのジゼル
<第12回>
第2部 VI 交渉決裂

さかしまのジゼル <第12回> 第2部 VI 交渉決裂 かげはら史帆   「よく隠し通せましたね。記者どもはマドモアゼル・グリジの秘密に最後まで気づかなかった」  感嘆と呆れの入り混じったメートル・ド・バレエの声に、旅装のジュールは勝利の笑 […]

  • 2022年10月21日

さかしまのジゼル
<第11回>
第2部 V 男のシルフィード

さかしまのジゼル <第11回> 第2部 V 男のシルフィード かげはら史帆   「俺が、振付を……?」  ジュールの口から、情けないほどにかすれた声が出る。目の前では、ウィーン・ケルントナートーア劇場の芸術監督カルロ・バロッキーノが、丸く赤 […]

  • 2022年10月7日

さかしまのジゼル
<第10回>
第2部 IV “踊るグリジ”

さかしまのジゼル <第10回> 第2部 IV “踊るグリジ” かげはら史帆    泣くだろうな──。  そう思ったら、やっぱり泣いていた。    小さな頭に不釣り合いなほど大きな濃黄色のリボンが、力なく耳の下まで垂れ下がっている。 […]