坂入健司郎×大阪交響楽団
ブラームス交響曲全曲演奏会 Vol.2
「身近なホール」に編集部が行ってみた!【後編】

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坂入健司郎×大阪交響楽団

ブラームス交響曲全曲演奏会 Vol.2

「身近なホール」に編集部が行ってみた!【後編】

text by 八木宏之&原典子
cover photo by 樋川智昭

一緒に呼吸をして、一体化する

八木:後編ではいよいよコンサートの模様をお届けします。

:配られたプログラムノートには、FREUDEの記事のQRコードを入れていただいていましたね。

八木:会場のお客さんにFREUDEの読者になっていただけるのはとても嬉しいですね。10月27日の第3回演奏会のチラシの裏面にも、FREUDEの記事のQRコードを入れていただきました。

第2回演奏会のプログラム

八木:第2回演奏会では、ブラームスの交響曲第2番のほかに、メンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》序曲とモーツァルトの交響曲第35番《ハフナー》が演奏されました。メンデルスゾーンでは、冒頭から坂入さんと木管セクションの呼吸がぴたりと合っていましたね。第1回で演奏されたモーツァルトの《魔笛》序曲の冒頭部分では、坂入さんがオーケストラに響きを「示して」いましたが、今回のメンデルスゾーンでは、指揮者とオーケストラが一緒に呼吸をして、一体化していたように思います。

:ブラームス演奏における伝統の話や、ドイツ・オーストリア音楽の系譜を織り込んだプログラムについては坂入さんへのインタビューで聞いていましたが、「重厚ではなく爽やかなドイツ音楽」というのは、なるほどこういうものなのかと、メンデルスゾーンがはじまった瞬間から感じることができました。

私は大阪交響楽団を今回はじめて生で聴いたのですが、坂入さんは「重心が低めの響き、いぶし銀の音色を持つオーケストラ」とおっしゃっていたので、そのあたりと坂入さんの目指す「爽やかでピュアなドイツ音楽」がどうマッチするのかな?と思っていたんです。けれど実際に聴いてみると、生き生きとした弦、自然な美しさをもつ管が、坂入さんと同じ方向を向いて音楽を作っていることがよく伝わってきました。

坂入健司郎と大阪交響楽団 ©︎樋川智昭

「メイプルホールでしか聴けないブラームス」を目指して

八木:今回のプログラムは、坂入さんの音楽性にぴたりと合っていたと思います。重厚な交響曲第1番よりも、流麗な第2番のほうが、坂入さんも伸び伸びと指揮することができたのではないでしょうか。ブラームスが20年以上もの歳月をかけて書いた第1番には作曲家自身の気負いがありますから、若い指揮者がリラックスして作品と向き合うのはなかなか難しいですよね。ベートーヴェンのプレッシャーから解放され、肩の力が抜けたブラームスの手による第2番では、坂入さんもより自由に、自分の持ち味を出せたのだと思います。

モーツァルトではオーケストラがアンサンブルを楽しんでいるのが、フレーズのひとつひとつから伝わってきました。第1回で演奏されたシューベルトの交響曲第5番でも坂入さんの音楽の魅力が溢れ出ていましたが、今回のプログラムではそれがより強く表出していました。

:メイプルホールは客席数が501席とコンパクトで、横に広い形状なので、オーケストラとの距離が近いですね。団員さんの表情も間近に見えて、低弦などはとくに迫力のある響きをダイレクトに感じることができました。東京のホールではなかなかできない体験です。いっぽうで、ちょっとこの規模のホールでブラームスの交響曲を演奏するのは響きすぎて難しいのかな? と思う瞬間もあり。八木さんはどう感じましたか?

八木:メイプルホールのようなコンパクトなホールでオーケストラを聴くと、その響きを肌で直に感じられますね。以前坂入さんも話していましたが、ブラームスが生きた19世紀には、こうしたコンパクトなホールでオーケストラを聴くのは珍しいことではありませんでしたし、オーケストラの編成も今より小さかったんです。坂入さんはそうしたブラームス演奏の伝統も、今回のツィクルスのテーマのひとつに掲げています。

そうしたコンセプトを踏まえると、もう少しメイプルホールの空間を意識したサウンドになると良いですよね。第1回、第2回では、少しオーケストラが鳴り過ぎていたところもあったように思います。オーケストラの力強い響きは演奏の熱量と結びついた魅力的な部分でもありますが、コンパクトな編成であること、そして本番と同じホールでリハーサルができることをぜひ活かして、メイプルホールならではのブラームスの響きを探求していってほしいです。

客席の喝采に応える坂入健司郎と大阪交響楽団 ©︎樋川智昭

:なるほど、そこは次回に期待したいところですね。第1回でオーケストラとの関係性を構築し、第2回でお互いへの理解を深めた坂入さん。いよいよ第3回では「坂入さんの音楽」を前面に打ち出して、「メイプルホールでしか聴けないブラームス」にしてほしいですね。

八木:第1回はほぼ完売でしたが、第2回では少し空席もありました。

:とはいえ、熱心に聴き入る若い方々の姿も見られました。大阪や京都から19:00の開演に間に合うよう、平日に仕事を切り上げて駆けつけるのは、高いモチベーションがないと。きっとオーケストラが大好きな猛者ですね。

八木地域のお客さん遠方から来る熱心なクラシック音楽ファンのどちらも、攻める地域ホールであるメイプルホールにとっては大切な存在ですよね。第3回は満席になるといいなと。

:さらに、第4回ではヴァイオリニストの石上真由子さんもドヴォルザークのコンチェルトのソリストとして出演されます。今回の演奏会では、奥田佳道さんのプレトークで、石上さんがサプライズ登場されました。お客さんも能動的に参加するのが『身近なホールのクラシック』の特徴ですから、ぜひ一緒に参加して、皆さんの感想をお聞かせいただきたいです!

八木:引き続き、メイプルホールのブラームスに注目していきましょう!

プレトークに臨む石上真由子と奥田佳道 ©︎樋川智昭

公演情報

《身近なホールのクラシック》ブラームス交響曲全曲演奏会 Vol.3
2023年10月27日(金)
箕面市立メイプルホール 大ホール

坂入健司郎(指揮)
大阪交響楽団

ブラームス:《ハイドンの主題による変奏曲》
ハイドン:交響曲第88番 ト長調《V字》
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調

2023年6月30日(金)チケット一般発売開始

公演詳細:https://minoh-bunka.com/2023/05/27/20231027-brahms-symphonies/

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