かげはら史帆
- 2024年6月29日
文学はブルックナーを救済するか──
高原英理『ブルックナー譚』評
<Review> 文学はブルックナーを救済するか ──高原英理『ブルックナー譚』評 text by かげはら史帆 『ブルックナー譚』 高原英理 著 中央公論新社 2024年 ブルックナーは「残念」なんかじゃない? アントン・ブルックナーは、クラシック […]
- 2023年4月14日
さかしまのジゼル
<第21回>
エピローグ──桟敷席にて、1873年10月29日
さかしまのジゼル <第21回> エピローグ──桟敷席にて、1873年10月29日 かげはら史帆 緞帳のように重たいまぶたをようやくこじあけたときには、すでにブランケットが背中から剥ぎ取られていた。寝返りを打って抵抗すると、枕まで奪われ […]
- 2023年3月31日
さかしまのジゼル
<第20回>
第3部 VI さかしまの夜明け
さかしまのジゼル <第20回> 第3部 VI さかしまの夜明け かげはら史帆 おまえは、男だから──。 父親の声が、遠雷のように意識のかなたから響く。 威圧的なニュアンスはまったくなかった。むしろその声は、いまにも消え入りそうに弱 […]
- 2023年3月17日
さかしまのジゼル
<第19回>
第3部 V オペラ座の新女王
さかしまのジゼル <第19回> 第3部 V オペラ座の新女王 かげはら史帆 コツ、コツ、コツ。 馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音──。 かつてマリー・タリオーニの象徴として畏れられていた足音。 その音でオペラ座を […]
- 2023年2月24日
さかしまのジゼル
<第18回>
第3部 IV ジゼル、または群舞たち
さかしまのジゼル <第18回> 第3部 IV ジゼル、または群舞たち かげはら史帆 作曲家のアドルフ・アダンの顔色が、ページを繰るにつれてだんだんと変わっていくのを、ジュールは目の当たりにした。手にした台本の束が、興奮でわなわなと震え […]
- 2023年2月10日
さかしまのジゼル
<第17回>
第3部 III 狂乱の振り写し
さかしまのジゼル <第17回> 第3部 III 狂乱の振り写し かげはら史帆 「彼女は完璧とはいえない。空中に飛翔するときでさえも、彼女は不安そうに周りを見回して、自分のそばにいてくれる人を探す。足りないのは彼女の主人であり師であるペロー、つま […]
- 2023年1月27日
さかしまのジゼル
<第16回>
第3部 II 夢見る詩人
さかしまのジゼル <第16回> 第3部 II 夢見る詩人 かげはら史帆 「客が立ち入っていい時間帯じゃないはずだ」 男の短い右腕を引っ張って、背骨の近くまで力いっぱいひねりあげると、また悲鳴が上がった。小脇に抱えていた書類鞄とステッ […]
- 2023年1月13日
さかしまのジゼル
<第15回>
第3部 I 仕組まれた契約──1840年
さかしまのジゼル <第15回> 第3部 I 仕組まれた契約──1840年 かげはら史帆 華奢な膝を折って床に泣き崩れるグリジを、ジュールはただただ呆然と見つめていた。 いったい何が起きたのか、すぐには呑み込めない。橙色に灯るテーブル […]
- 2022年12月25日
懐と業の深さ──
『パリ・オペラ座-響き合う芸術の殿堂』展とジュール・ペロー
懐と業の深さ── 『パリ・オペラ座-響き合う芸術の殿堂』展とジュール・ペロー text by かげはら史帆 19世紀パリ・オペラ座で活躍した男性ダンサーであり、名作バレエ《ジゼル》の振付師のひとりである、ジュール・ペローという人物が主人 […]
- 2022年12月9日
さかしまのジゼル
<第14回>
第2部 VIII 最高のプレゼント
さかしまのジゼル <第14回> 第2部 VIII 最高のプレゼント かげはら史帆 「もし、あのまま悲劇で終わっていたら──」 芸術監督とメートル・ド・バレエの感嘆の声が、ジュールの耳を快く打った。 「ここまでのヒットはなかったでしょう […]
- 2022年11月18日
さかしまのジゼル
<第13回>
第2部 VII さかしまのラ・シルフィード
さかしまのジゼル <第13回> 第2部 VII さかしまのラ・シルフィード かげはら史帆 「俺はみにくい」 籐編みの揺りかごを片手で揺らしていたグリジが、ふっと顎を上げた。 「きみは美しいのに、どうして、こんなみにくい男と一緒にいて、子どもまで […]
- 2022年11月4日
さかしまのジゼル
<第12回>
第2部 VI 交渉決裂
さかしまのジゼル <第12回> 第2部 VI 交渉決裂 かげはら史帆 「よく隠し通せましたね。記者どもはマドモアゼル・グリジの秘密に最後まで気づかなかった」 感嘆と呆れの入り混じったメートル・ド・バレエの声に、旅装のジュールは勝利の笑 […]