- 2022年10月21日
さかしまのジゼル
<第11回>
第2部 V 男のシルフィード
さかしまのジゼル <第11回> 第2部 V 男のシルフィード かげはら史帆 「俺が、振付を……?」 ジュールの口から、情けないほどにかすれた声が出る。目の前では、ウィーン・ケルントナートーア劇場の芸術監督カルロ・バロッキーノが、丸く赤 […]
さかしまのジゼル <第11回> 第2部 V 男のシルフィード かげはら史帆 「俺が、振付を……?」 ジュールの口から、情けないほどにかすれた声が出る。目の前では、ウィーン・ケルントナートーア劇場の芸術監督カルロ・バロッキーノが、丸く赤 […]
さかしまのジゼル <第10回> 第2部 IV “踊るグリジ” かげはら史帆 泣くだろうな──。 そう思ったら、やっぱり泣いていた。 小さな頭に不釣り合いなほど大きな濃黄色のリボンが、力なく耳の下まで垂れ下がっている。 […]
さかしまのジゼル <第9回> 第2部 III 新しい契約 かげはら史帆 「この子を、パリ・オペラ座に……」 穏やかな波音が寄せる長テーブルを前に、勝機をつかんだジュールは泰然とうなずいた。 「わが家は歌手一族ですの」「イタリア・オペラ […]
さかしまのジゼル <第8回> 第2部 II 救いのミューズ かげはら史帆 「フランチェスカ、グラン・バットマンで身体を傾けすぎないで。アデライーデ、下ろした脚をきちんとポジションに収めて。ベルタ、肘がだんだん落ちてきてる。そう、それでい […]
さかしまのジゼル <第7回> 第2部 I 転落と流浪──1835年 かげはら史帆 冷たく湿った土の感触を片頬に感じながら、ジュールはやっとの思いで目を開けた。 幌つき四輪馬車カレーシュもろとも、崖の下まで転げ落ちてしまったかと思った […]
さかしまのジゼル <第6回> 第1部 V 俺はライバルになれない かげはら史帆 客席のどよめきが、ジュールの全身を快感に包んだ。 批評家たちが腕組みをする平土間席から、成金紳士たちが禿頭をずらりと並べるボックス席から、貧乏学生や芸術 […]
さかしまのジゼル <第5回> 第1部 IV オペラ座の女王 かげはら史帆 あのひとの足音だけは、すぐにわかる。 コツ、コツ、コツ。馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音だ。 女性ダンサーたちは、みんな彼女のスキルを盗もうと必死だ。彼女 […]
さかしまのジゼル <第4回> 第1部 III リヨンの家出少年 かげはら史帆 フランス南西部の街・ボルドーから、若い男性ダンサーが移籍してくる。 そんな噂を耳にしたのは、ジュールが10歳の頃だった。 そのダンサー──シャルル・マズ […]
さかしまのジゼル <第3回> 第1部 II 遠き日の武勇伝 かげはら史帆 バレエダンサーは深夜労働者だ。 出番はたいがい夜が更けてからになる。オペラとバレエとの2本立て上演の日は、ほとんどの場合バレエの方が後半に回されるし、オペラに […]
さかしまのジゼル <第2回> 第1部 I みにくいバレエダンサー──1833年 かげはら史帆 「これが……俺?」 素っ頓狂な青年の声が、パリ・オペラ座のバックステージにむなしく響いた。 彫刻家のアトリエに足を運んで、何度も何度も、デ […]
さかしまのジゼル <第1回> イントロダクション──1873年 かげはら史帆 踊り子たちの白銀のチュールを、湾曲した大きな影がさえぎった。 目のかすみか──と思ったのは一瞬だった。右手を庇ひさしにして、大広間の中央を足早に過ぎていっ […]
<Review> 「ただの聴衆」よ、ペンを執れ―― 音楽ファンとして読む『批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く』 『批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く』 北村紗衣 著 筑摩書房 2021年 text by かげはら史帆 […]