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かげはら史帆

  • 2022年10月21日

さかしまのジゼル
<第11回>
第2部 V 男のシルフィード

さかしまのジゼル <第11回> 第2部 V 男のシルフィード かげはら史帆   「俺が、振付を……?」  ジュールの口から、情けないほどにかすれた声が出る。目の前では、ウィーン・ケルントナートーア劇場の芸術監督カルロ・バロッキーノが、丸く赤 […]

  • 2022年10月7日

さかしまのジゼル
<第10回>
第2部 IV “踊るグリジ”

さかしまのジゼル <第10回> 第2部 IV “踊るグリジ” かげはら史帆    泣くだろうな──。  そう思ったら、やっぱり泣いていた。    小さな頭に不釣り合いなほど大きな濃黄色のリボンが、力なく耳の下まで垂れ下がっている。 […]

  • 2022年9月23日

さかしまのジゼル
<第9回>
第2部 III 新しい契約

さかしまのジゼル <第9回> 第2部 III 新しい契約 かげはら史帆   「この子を、パリ・オペラ座に……」  穏やかな波音が寄せる長テーブルを前に、勝機をつかんだジュールは泰然とうなずいた。 「わが家は歌手一族ですの」「イタリア・オペラ […]

  • 2022年9月9日

さかしまのジゼル
<第8回>
第2部 II 救いのミューズ

さかしまのジゼル <第8回> 第2部 II 救いのミューズ かげはら史帆   「フランチェスカ、グラン・バットマンで身体を傾けすぎないで。アデライーデ、下ろした脚をきちんとポジションに収めて。ベルタ、肘がだんだん落ちてきてる。そう、それでい […]

  • 2022年8月26日

さかしまのジゼル
<第7回>
第2部 I 転落と流浪──1835年

さかしまのジゼル <第7回> 第2部 I 転落と流浪──1835年 かげはら史帆    冷たく湿った土の感触を片頬に感じながら、ジュールはやっとの思いで目を開けた。  幌つき四輪馬車カレーシュもろとも、崖の下まで転げ落ちてしまったかと思った […]

  • 2022年8月12日

さかしまのジゼル
<第6回>
第1部 V 俺はライバルになれない

さかしまのジゼル <第6回> 第1部 V 俺はライバルになれない かげはら史帆    客席のどよめきが、ジュールの全身を快感に包んだ。  批評家たちが腕組みをする平土間席から、成金紳士たちが禿頭をずらりと並べるボックス席から、貧乏学生や芸術 […]

  • 2022年7月22日

さかしまのジゼル
<第5回>
第1部 IV オペラ座の女王

さかしまのジゼル <第5回> 第1部 IV オペラ座の女王 かげはら史帆    あのひとの足音だけは、すぐにわかる。  コツ、コツ、コツ。馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音だ。  女性ダンサーたちは、みんな彼女のスキルを盗もうと必死だ。彼女 […]

  • 2022年7月8日

さかしまのジゼル
<第4回>
第1部 III リヨンの家出少年

さかしまのジゼル <第4回> 第1部 III リヨンの家出少年 かげはら史帆    フランス南西部の街・ボルドーから、若い男性ダンサーが移籍してくる。  そんな噂を耳にしたのは、ジュールが10歳の頃だった。  そのダンサー──シャルル・マズ […]

  • 2022年6月24日

さかしまのジゼル
<第3回>
第1部 II 遠き日の武勇伝

さかしまのジゼル <第3回> 第1部 II 遠き日の武勇伝 かげはら史帆    バレエダンサーは深夜労働者だ。  出番はたいがい夜が更けてからになる。オペラとバレエとの2本立て上演の日は、ほとんどの場合バレエの方が後半に回されるし、オペラに […]

  • 2022年5月27日

さかしまのジゼル
<第1回>
イントロダクション──1873年

さかしまのジゼル <第1回> イントロダクション──1873年 かげはら史帆    踊り子たちの白銀のチュールを、湾曲した大きな影がさえぎった。  目のかすみか──と思ったのは一瞬だった。右手を庇ひさしにして、大広間の中央を足早に過ぎていっ […]

  • 2021年10月11日

「ただの聴衆」よ、ペンを執れ――
音楽ファンとして読む『批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く』

<Review> 「ただの聴衆」よ、ペンを執れ―― 音楽ファンとして読む『批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く』 『批評の教室 ─チョウのように読み、ハチのように書く』 北村紗衣 著 筑摩書房 2021年 text by かげはら史帆 […]