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Novel

  • 2022年8月26日

さかしまのジゼル
<第7回>
第2部 I 転落と流浪──1835年

さかしまのジゼル <第7回> 第2部 I 転落と流浪──1835年 かげはら史帆    冷たく湿った土の感触を片頬に感じながら、ジュールはやっとの思いで目を開けた。  幌つき四輪馬車カレーシュもろとも、崖の下まで転げ落ちてしまったかと思った […]

  • 2022年8月12日

さかしまのジゼル
<第6回>
第1部 V 俺はライバルになれない

さかしまのジゼル <第6回> 第1部 V 俺はライバルになれない かげはら史帆    客席のどよめきが、ジュールの全身を快感に包んだ。  批評家たちが腕組みをする平土間席から、成金紳士たちが禿頭をずらりと並べるボックス席から、貧乏学生や芸術 […]

  • 2022年7月22日

さかしまのジゼル
<第5回>
第1部 IV オペラ座の女王

さかしまのジゼル <第5回> 第1部 IV オペラ座の女王 かげはら史帆    あのひとの足音だけは、すぐにわかる。  コツ、コツ、コツ。馬の蹄がステップを踏む、軽やかな音だ。  女性ダンサーたちは、みんな彼女のスキルを盗もうと必死だ。彼女 […]

  • 2022年7月8日

さかしまのジゼル
<第4回>
第1部 III リヨンの家出少年

さかしまのジゼル <第4回> 第1部 III リヨンの家出少年 かげはら史帆    フランス南西部の街・ボルドーから、若い男性ダンサーが移籍してくる。  そんな噂を耳にしたのは、ジュールが10歳の頃だった。  そのダンサー──シャルル・マズ […]

  • 2022年6月24日

さかしまのジゼル
<第3回>
第1部 II 遠き日の武勇伝

さかしまのジゼル <第3回> 第1部 II 遠き日の武勇伝 かげはら史帆    バレエダンサーは深夜労働者だ。  出番はたいがい夜が更けてからになる。オペラとバレエとの2本立て上演の日は、ほとんどの場合バレエの方が後半に回されるし、オペラに […]

  • 2022年5月27日

さかしまのジゼル
<第1回>
イントロダクション──1873年

さかしまのジゼル <第1回> イントロダクション──1873年 かげはら史帆    踊り子たちの白銀のチュールを、湾曲した大きな影がさえぎった。  目のかすみか──と思ったのは一瞬だった。右手を庇ひさしにして、大広間の中央を足早に過ぎていっ […]