チーム箕面の奇跡をもう一度!
坂入健司郎&大阪交響楽団、石上真由子による
『みんなのリクエスト・コンサート』

チーム箕面の奇跡をもう一度!

坂入健司郎&大阪交響楽団、石上真由子による

『みんなのリクエスト・コンサート』

text by 原典子
photo ©樋川智昭

サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番と
ブルックナーの交響曲第4番《ロマンティック》

坂入健司郎と大阪交響楽団によるブラームスの交響曲全曲演奏会。箕面市立メイプルホール《身近なホールのクラシック》の一環として、3年間にわたって進められてきたプロジェクトが、これほどまでに幸福な結末を迎えるとは、2022年のスタート時に誰が予想しただろうか?

プロの指揮者として歩みはじめたばかりの坂入にとって、とてつもなく大きな挑戦だったツィクルス。第1回演奏会では緊張と経験不足から団員とのコミュニケーションが必ずしもスムーズに運んでいないことが客席からも見受けられた。しかし第2回、第3回と回を重ねるごとに坂入と団員たちの表情はみるみる明るくなり、音楽は躍動感を増していった。浮き彫りになる課題を一つひとつクリアしながら両者が高め合っていく過程は、すべての演奏会を取材してきたFREUDEによる記事をお読みいただきたい。

■ツィクルス完結にあたっての総括記事
箕面市立メイプルホール(大阪府)
坂入健司郎×大阪交響楽団『ブラームス交響曲全曲演奏』完結
指揮者の飛翔を目撃する
前編 https://freudemedia.com/feature/sakairibrahmsinterview2024one
後編 https://freudemedia.com/feature/sakairibrahmsinterview2024two

そして迎えた第4回、ツィクルス完結の熱気に包まれた会場にいた人々が抱いた感情は「もう終わってしまうのか!」というものだったろう。坂入、大阪響、メイプルホール、聴衆、すべてが一体となって作り上げてきた「チーム箕面」の奇跡をもう一度! そんな声に応えて、2025年3月26日にスピンオフ公演が開催されることになった。それもプログラムをインターネット投票で決める『みんなのリクエスト・コンサート』である。

インターネット投票は「演奏会の幕開けにふさわしい1曲」「石上真由子さんによるヴァイオリン独奏曲」「メインディッシュとなるシンフォニー」という3つのカテゴリーごとに、それぞれ10曲以上の選択肢の中から1曲を選ぶ方式で、2024年10月1日から31日にわたって行なわれた。筆者も一票を投じたが、プロデューサーになった気分で、コンサートのプログラム構成をあれこれ考えながら組み立てていくのは楽しい時間だった。

■投票結果はこちら
https://minoh-bunka.com/2024/11/17/20250326-requestconcert-kekka/

「演奏会の幕開けにふさわしい1曲」に選ばれたのは、スメタナの連作交響詩《わが祖国》より第2曲「モルダウ(ヴルタヴァ)」。ヴルタヴァ川の悠久の流れを描くかのメロディに、ヨーロッパへの旅情をかきたてられることだろう。ちなみにスメタナの命日である5月12日は奇しくも坂入の誕生日でもあり、毎年この日に《わが祖国》の演奏で幕を開ける「プラハの春音楽祭」に思いを馳せているという。

「石上真由子さんによるヴァイオリン独奏曲」には、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番が選ばれた。石上は2021年6月にベートーヴェン、2024年6月にドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を坂入&大阪響と箕面で共演している。さらにもう1曲となったとき、王道のチャイコフスキーやメンデルスゾーンではなく、隅々までヴァイオリンの美質をちりばめた聴きどころたっぷりのサン=サーンスが選ばれたところがいかにもチーム箕面らしい。石上がこの曲を演奏するのは中学生以来とのこと。坂入は2023年1月に神奈川フィルハーモニー管弦楽団、福田麻子(ヴァイオリン)と共演したときのライヴ映像がYouTubeにあるので、石上&大阪響とはどんな演奏になるのか想像しながら観てみるのもいいだろう。

■坂入健司郎指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団、福田麻子(ヴァイオリン)によるサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番

そして「メインディッシュとなるシンフォニー」に選ばれたのは、ブルックナーの交響曲第4番《ロマンティック》。坂入にとって特別な作曲家であり、ここぞという演奏会でとりあげてきたブルックナーを、やはり箕面でも聴きたいという声が多かったのは当然だろう。第4番について坂入は以前、FREUDEのインタビューのなかで「作曲家の中世への憧れが反映されていて、ブルックナーの音楽美学が凝縮されている作品」と語っている。大阪響とのブラームスで培ってきた成果を披露するのに、これ以上ない選曲。高まる聴衆の期待にどう応えてくれるのか、今から楽しみでならない。

それにしても、通常のコンサートではあり得ないほどの盛りだくさんのプログラム。チーム箕面の一員となるべく、あなたも箕面に駆けつけるしかない!

公演情報

《身近なホールのクラシック》
みんなのリクエスト・コンサート
2025年3月26日(水)19:00
※18:45〜 音楽評論家の奥田佳道によるプレトークあり

坂入健司郎(指揮)
石上真由子(ヴァイオリン)
大阪交響楽団(管弦楽)

スメタナ:モルダウ
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番
ブルックナー:交響曲第4番《ロマンティック》

料金:一般3,000円(メイプルフレンド会員2,700円)、大学生以下1,000円

公演詳細:https://minoh-bunka.com/2024/10/26/20250326-request-concert/

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