LEO
箏で表現する意味を見つめ続ける挑戦者
SEVEN STARS in 王子ホール Vol.1

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LEO

箏で表現する意味を見つめ続ける挑戦者

SEVEN STARS in 王子ホール Vol.1

text by 原典子

「今」という時代に古典をアップデートするしなやかな感性、音楽だけにとどまらないユニークな個性を持った若手アーティストたちによるコンサート・シリーズ『SEVEN STARS』(主催:日本コロムビア)が始動。王子ホールでコンサートを開催する全7組のアーティストを、FREUDEでは取材記事でご紹介していく。

箏とオーケストラがひとつの生命体になる

第1弾は、箏アーティストのLEO。9歳のとき、インターナショナルスクールで箏と出会い、16歳で邦楽界の登竜門「くまもと全国邦楽コンクール」の最優秀賞を史上最年少受賞。2017年にメジャー・デビューし、古典のみならずクラシックやポップスなどの演奏を通して箏の新たな可能性を追求しつつ、東京藝術大学に進んで研鑽を積んできた。

そんなLEOにとって、今年4月30日の読売日本交響楽団(指揮:鈴木優人)との共演は大きな舞台となるはずだった。世界的に活躍する作曲家、藤倉大がLEOのために書いた箏協奏曲の世界初演。じつは我々も、この公演をリハーサル段階から密着取材する予定だったが、新型コロナウイルス拡大にともなう緊急事態宣言のため公演は中止。無観客での公演をテレビ収録する形となった(日本テレビ『読響プレミア』にて放送予定)。

「この協奏曲は、僕が藤倉さんに委嘱して2019年に初演させていただいた《竜》という曲をもとに作られています(アルバム『In A Landscape』収録)。もとの曲もすごい変拍子でしたが、協奏曲でも日本の音楽ならではの微妙な間(ま)や速度変化があって、独特のグルーヴ感が面白い作品です。作曲の過程では、藤倉さんとチャットや動画で奏法や音色を確かめながら進めていきましたが、古典の曲で使う奏法を藤倉さんなりに再解釈して、新しいコンテクストのなかに置くことによって、聴いたことのない音響が生まれていると思います。オーケストラもいろいろな奏法で箏の音を模倣したり、増大させたりして、“箏 VS オーケストラ”というよりは、箏とオーケストラがひとつの生命体になったような感じですね」(LEO、以下同)

古典のなかにある箏の本質的な魅力

現代音楽のフィールドでも活躍する筝曲家、沢井一恵に師事して現代邦楽を学んできたLEOだが、藝大の邦楽科で徹底して古典に取り組んだ経験はどのように活かされているのだろうか。

「僕にとって西洋音楽のリズムや音階は幼少期から聴きなじみのあるものですが、日本で育っているのに聴きなじみのない音楽として、日本の古典があるわけで。両者の違いはなんだろう? ということを根本的な部分から考えるようになりました。やはり古典で受け継がれてきている部分に、箏という楽器の本質があることは確実で、それは現代の曲を弾く際も伝えていかなければならないものです。そういう意味で、大学で技術的なことだけでなく、楽器や曲がどういう歴史を辿り、どういった人に演奏されてきたのかといった文化的背景を学べたことは、自分の考えを深め、音を豊かにするための糧になっていると思います」

今年3月にリリースされた最新アルバム『In A Landscape』を聴くと、そうした彼の思索と試みが、箏にしかない、そしてLEOにしか作り出せない唯一無二の音世界となって見事に結実しているのが分かるだろう。なにしろバッハ、ダウンランド、藤倉大、八橋検校、ドビュッシー、坂本龍一、スティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージが一枚のアルバムに収められているのだから。

バッハと八橋検校は同じ17世紀に生まれた音楽家(八橋検校の没年である1685年にバッハが生まれた)。バッハがあれだけたくさんの音を使っているのに対し、八橋検校の曲は空白ばかりだったりと大きな違いはありますが、どちらも基本的に変奏曲という構造は同じです。あるテーマが提示され、それを発展させていくことで展開する音楽。ですから僕としては、どちらも似たような精神状態で演奏することができるのです」

ダウランドの《涙のパヴァーヌ》ではリュートのように、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番ではリバーブをきかせて夢幻的に、坂本龍一の《1919》ではソリッドに、といったように作品によってまったく異なる表情を見せる音色のチョイスも絶妙。LEOのなかにあるさまざまな音楽の引き出しを感じさせる。

「一部を除いてほとんどの曲を自分でアレンジしています。箏にもいろいろな種類があるので、まずはどんな箏を使った編成にするかを考えるところからはじまり、次に箏で弾くために編曲していく過程では、原曲の音を抜いたり足したりすることも。そして練習に入ってからは、箏という楽器のどういった要素に焦点を当てて演奏するかを試行錯誤しながら仕上げていくといった感じです。
すべてをいかにも箏らしいアレンジにすると“なんでその曲を弾いたの?”となってしまうし、逆に、原曲の雰囲気を出そうとそちら側に寄せすぎると“なんで箏で弾いたの?”となってしまう。ですからそこはバランスを見極めて、取捨選択をしていかなければなりません。この箏らしい表現はどうしても入れたいとか、この原曲の要素は絶対に残しておきたいとか。つねに楽器と自身のアイデンティティを考えながら演奏しています」

「融合」というより「共存」

王子ホールでのコンサートでは、上記のアルバムにも収録されている八橋検校《みだれ》、ダウランド《涙のパヴァーヌ》、ケージ《In A Landscape》のほか、沢井忠夫《楽》、伊福部昭《日本組曲》などもプログラムされている。

「10代のときにいちばん勉強していたのは沢井忠夫先生の曲でした。クラシックにたとえるなら、ショパンのような作曲家だと思うんですよね。自身が箏曲家であるがゆえに、箏の魅力がすべて入っていて、自然な技巧で良い音を出すことができる作品をたくさんお書きになっています。《日本組曲》は、伊福部昭先生が19歳のときに作曲した《ピアノ組曲》が、のちにオーケストラ版に編曲された作品で、盆踊りやねぶたといった日本のリズムと、西洋的なハーモニーの両方を感じることができます。
日本の音楽というのは、音を積み重ねて時間軸を作っていく芸術というよりも、空間に音を置いて、その空間自体を作っていく芸術だと感じています。生で聴くと伝わる情報量も違ってきますので、コンサートならではの楽しみ方ができるのではと思います」

坂本龍一は好きな音楽家ランキングのトップに居続ける存在。最近ハマっているのは、アルメニアのコンポーザー・ピアニスト、ティグラン・ハマシアンとのこと。

ティグラン・ハマシアンは、アルメニアの伝統音楽の要素、ジャズの要素、幼少期から聴いていたメタル・ロックの要素をバランスよくひとつの集合体にして、新しいジャンルと言ってもいいぐらい完成された音楽を作っています。自身のルーツと向き合い、習ってきたツールを使って、好きなジャンルに取り組む、そんな姿が音楽家として尊敬できるし、見習いたいですね」

目指すテーマは、日本の古典と西洋音楽の「融合」というより「共存」。そうやって箏のレパートリーを増やしていくことで、箏という楽器自体の普及と発展に貢献していきたいと語る。箏の未来は、LEOとともにある。

公演情報
LEO(箏)×CLASSIC~In A Landscape

2021年5月22日(土)14:00開演
東京・王子ホール

共演:木村麻耶[箏]

八橋検校:みだれ
ダウランド:涙のパヴァーヌ
宮城道雄:春の夜
ケージ:In A Landscape
伊福部昭:日本組曲より
沢井忠夫:楽 ほか

主催:日本コロムビア
問い合わせ先:Mitt Tel.3-6265-3201(平日12:00~17:00)
https://leokonno.com/live/live_20210522.html

■日本コロムビア エグゼクティブ・プロデューサー岡野博行氏より
箏は、音量が小さく、余韻も少ない、とても繊細な楽器ですが、LEOは、弱点とも言えるその特徴を逆手に取り、クラシックと邦楽の間に、単なる折衷とは違う、新しい音空間を作り出す、まさに新時代を感じさせる、素晴らしいアーティストです。
今回も、彼の卓越したテクニックに圧倒される曲から、王子ホールの響きを活かして、空間そのものを味わうような曲まで、これまでにない音楽体験を感じさせてくれるはずですので、是非ご期待ください。

LEO
1998年、横浜生まれ。本名・今野玲央。横浜インターナショナルスクールの音楽の授業で9歳より箏を始める。音楽教師であり箏曲家のカーティス・パターソン氏の指導を受け、のちに箏曲家の沢井一恵氏に師事。
14歳で全国小中学生箏曲コンクールにてグランプリ受賞。16 歳でくまもと全国邦楽コンクールにて史上最年少での最優秀賞・文部科学大臣賞受賞。一躍脚光を浴び、2017年に19 歳でメジャー・デビュー。
『情熱大陸』『題名のない音楽会』『徹子の部屋』など多くのメディアに出演。
井上道義、秋山和慶、沖澤のどかをはじめとした指揮者や、東京フィルハーモニー交響楽団、京都市交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団と共演し、ソリストを務める。
2019 年出光音楽賞、神奈川文化賞未来賞受賞。現在、沢井箏曲院講師。東京藝術大学在学中。2021年3月にリリースされた最新アルバム『In A Landscape』(日本コロムビア/DENON)では、バッハ、スティーヴ・ライヒ、ジョン・ケージ、藤倉大など革新的なプログラムに挑戦している。同年、藤倉大委嘱新作の箏協奏曲を鈴木優人指揮・読売日本交響楽団との共演で世界初演。
伝統を受け継ぎながら、箏の新たな魅力を追求する若き実力者として注目と期待が寄せられている。
オフィシャルサイト https://leokonno.com/

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