ドリーマーズ・サーカスが2年ぶりに来日!
クラシックと民俗音楽の境界を自在に越えて現代的なサウンドに

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ドリーマーズ・サーカスが2年ぶりに来日!

クラシックと民俗音楽の境界を自在に越えて現代的なサウンドに

text by 山﨑隆一
cover photo ©︎Göran Petersson / Daniela Hasse Coutinho

デンマーク発、ワールドワイドな音世界をクリエイトする3人組

ヨーロッパで確固としたシーンが形づくられている伝統音楽(トラディショナル・フォーク・ミュージック、民俗音楽)。日本でもアイルランドを中心としたケルト音楽を筆頭に根強い人気がある。

伝統音楽とは、語弊を恐れず簡単にいえば、その土地で歌い、奏で継がれてきた民衆の音楽。そこには名もなき人々によって紡がれた生活の物語があり、知恵があり、そして風景がある。ヨーロッパの伝統音楽を聴くとクラシック音楽の原風景が見える、なんていったらロマンチックに過ぎるだろうか。

さて、北欧のデンマークを本拠地として、現在のヨーロッパの伝統音楽シーンを牽引しているのが、今年10月に2年ぶりの来日が予定されているドリーマーズ・サーカスだ。

ルネ・トンスゴー・ソレンセン(ヴァイオリン)、アレ・カー(シターン)、ニコライ・ブスク(ピアノ&アコーディオン)の3人組で、それぞれが伝統音楽を軸としつつも、クラシックやジャズをはじめあらゆる音楽に精通する、いわばジャンルを縦横無尽に横断する越境者たちの集まりである。

©︎Søren Lynggaard Andersen

結成は2009年で、これまでに4枚のアルバムを発表している(近々ニュー・アルバムをリリースするというニュースもある)。

3人に共通するのは、デンマークが生んだ大作曲家、カール・ニールセンを心の底から愛していること。フォーク・ソングをこよなく愛したニールセンからの影響を3人は声を大にしてアピールするし、過去には彼の楽曲を演奏するコンサートも行っている。

そんな彼らを、ひとりずつ紹介していこう。

クラシックの手法で民俗音楽にアプローチするルネ

ルネ・トンスゴー・ソレンセン ©︎石田昌隆

ドリーマーズ・サーカスのフロントマン的存在のルネ・トンスゴー・ソレンセン。コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務め(現在は退団)、ソリストとして、またデンマーク弦楽四重奏団の第一ヴァイオリン奏者としても活躍するなど華々しいキャリアを築いている。

一方で、父親が伝統音楽が盛んなフェロー諸島出身であることも影響してみずからも民俗音楽に傾倒し、デンマーク弦楽四重奏団でもベートーヴェンの作品にチャレンジしつつ、民俗色の強い作品も積極的に発表してきた。

演奏テクニックをはじめ作曲法など、自分がクラシック音楽で培ってきた手法を駆使してフォーク・ミュージックにアプローチできることが彼ならではの魅力であり、ライブではクラシック音楽が持つ洗練された美しさと民俗音楽の躍動感が交錯するドラマチックなヴァイオリンを堪能することができる。

フォーク・ミュージックの若きマスター、アレ

アレ・カー ©︎石田昌隆

スカンジナビア半島の南端、スウェーデンのスコーネ地方(コペンハーゲンとは海を挟んで目と鼻の先)出身のアレ・カーはフォーク・ミュージシャンの一家に育ち、早くからヴァイオリンやクラシックギターなどの楽器に親しんだ。

彼のメイン楽器であるシターン(マンドーラに似た楽器。5コースの復弦)を手にしたのは14歳のとき。その後ストックホルムの王立音楽大学で学び、クラシックの音楽理論とシターンをはじめとする伝統楽器の技術を身に付けた。

フィドルの演奏にも優れ、リクスペルマン(スウェーデンの音楽家に与えられる称号。「国民的フォーク・ミュージシャン」的な意味をもつ)にもなっている。現在はドリーマーズ・サーカス以外にも伴奏などで多数のセッションに参加するほか、いくつもの教育機関で教鞭をとるなど、八面六臂の活躍を見せている。

ドリーマーズ・サーカスでは、バンドのリズムを支える屋台骨的な存在であると同時に、ライブではスコーネ地方に伝わるクロッグ・フィドルを披露したり、民俗音楽の楽しさを存分に味わわせてくれる。

ドリーマーズ・サーカスのサウンドをまとめあげるニコライ

ニコライ・ブスク ©︎石田昌隆

アコーディオン奏者/ピアニストとしてのほかに、作曲家・編曲家としての顔も持ち、ジャンルを問わず各方面で引っ張りだこのニコライ・ブスク。デンマーク・ミュージック・アワードにおける10回を超える受賞歴が、彼がどれだけデンマークの音楽シーンに貢献しているかを雄弁に物語っている。

4歳でピアノ、7歳でアコーディオンを始めた彼は、10歳でジャズと出会いトランペットも習い始めた。クラシック、フォーク・ミュージック、そしてジャズが彼の音楽的な土台を形作った。

ドリーマーズ・サーカスのライブを観ると、彼がサウンドをまとめるキーマンだということがよくわかる。クラシックの香りを強く感じさせる繊細なルネ、フォーク・ミュージックの力強さを体現するアレの個性を生かしつつも、そのエネルギーをどの方向に持っていくか。土着的な色を強くするのか、それとも都会的な味付けにするのか、その舵を握っているのがニコライなのである。

北欧の伝統音楽を後世に伝える“Handed On”

最後に、ドリーマーズ・サーカスが取り組んでいる活動をひとつ紹介したい。“Handed On”という、デンマークとスウェーデンのフォーク・ミュージックの伝統を後世に伝えたいという気持ちからスタートしたプロジェクトで、彼らが新たに書き下ろしたり編集したメロディが全58曲、演奏のレベル別にまとめられている。各曲の動画をYouTubeで観ることができ、楽譜は紙とデジタルで購入が可能だ。

“Handed On”のサイト
https://www.handedon.com/

北欧の音楽や文化に興味のある方はもちろん、バロック音楽をやる方や、ジャンルをまたいだ音楽をやりたい人には格好の教材になるはずだ。

日本ではゲーム音楽の第一人者、光田康典とのコラボも実現させているドリーマーズ・サーカス。北欧の伝統音楽に対するリスペクトを忘れず、しかし世界に向けたオリジナルな音楽を発信する彼らのステージを、これを機にぜひ体感してほしい。

©︎石田昌隆

公演情報

ドリーマーズ・サーカス 2024年来日公演

<東京・渋谷公演>
2024年10月25日(金)19:00
渋谷区文化総合センター大和田 6階 伝承ホール
S席6,500円/桟敷席6,100円/25歳以下3,500円
公演詳細:https://plankton.co.jp/dreamers/index.html

<全国公演>
2024年
10月19日(土)千葉・船橋市民文化創造館(きららホール)
10月20 日(日)福井・ハーモニーホールふくい
10月23 日(水)東京・銀座 王子ホール
10月24 日(木)山形・山形県郷土館「文翔館」
10月26 日(土)埼玉・所沢市民文化センターミューズ
公演詳細: https://plankton.co.jp/dreamers/index.html#tourdate

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