今蘇るフランスいにしえの響き
愛知室内オーケストラ フランス・プログラム・シリーズ第1回

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今蘇るフランスいにしえの響き

愛知室内オーケストラ フランス・プログラム・シリーズ第1回

text by 八木宏之

愛知県名古屋市を拠点に、ここ数年で大きな飛躍を遂げている愛知室内オーケストラ。来たる5月1日、しらかわホールにて『バソンによる近代フランス音楽の色彩復古』と題するフランス・プログラム・シリーズの第1回が開催される。このシリーズは、通常用いられるドイツ式ファゴットをフランス伝統の楽器バソンに持ち替え、バソン・セクションを起点に古き良きフランスのオーケストラの響きを現代に蘇らせようという意欲的な試みである。

バソンはフランス式のファゴット(バスーン)を指し、独特の高雅な音色が特徴であるが、機動性とダイナミクスに優れるドイツ式ファゴットが世界を席巻し、今日ではフランス語圏でも限られた奏者が吹くのみとなった。そんな幻の楽器バソンのエレガントな音色は、1960年代までフランスのオーケストラの響きの核となるものだった。パリ音楽院管弦楽団やパイヤール室内管弦楽団の録音ではバソンが活躍していた時代を偲ぶことができる。そんな失われかけたフレンチ・オーケストラ・サウンドをバソンとともにもう一度探求してみようというのがこのシリーズのコンセプトなのだ。ウィーンではウィンナ・オーボエやウィンナ・ホルンの伝統が守られ、今日でも独特のブルックナー、マーラーの演奏が聴かれることはよく知られているが、グローバル化した今日では稀な例であり、愛知室内オーケストラの今回の試みは音色と響きの地域性という視点で大変意義深いものだ。

ソリストとして登場する小山清は国立パリ高等音楽院でバソンを学んだのち、ヨーロッパを中心にソリストとして活躍し、帰国後は日本フィルの中心メンバーを長く務めたバソンのトップランナーである。ジョリヴェの《バソン、弦楽合奏、ハープとピアノのための協奏曲》で、ソロ楽器としてのバソンの魅力を存分に聴かせてくれるだろう。

このコンサートのもう一人の主役であるファゴット・セクション、いやバソン・セクションがリードするオーケストラは、ドビュッシーとラヴェルの名曲をどんな色彩で描き出すのだろうか。ラヴェルの《マ・メール・ロワ》ではコントルバソンによるソロも楽しめるというのだから、これは聴き逃せない。長年パリを拠点に活躍し、フランス音楽のエスプリを知り尽くす矢崎彦太郎のタクトのもと、フランス近代音楽いにしえの響きがいま蘇る。

小山清 photo by Frédéric Coune
矢崎彦太郎 photo by 有田周平

 

愛知室内オーケストラ フランス・プログラム・シリーズ第1回
~バソンによる近代フランス音楽の色彩復古~

2021年5月1日(土)18:45開演 18:00開場
三井住友海上しらかわホール
矢崎 彦太郎[指揮]
小山 清[バソン]*

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:小組曲
ジョリヴェ:バソン、弦楽合奏、ハープとピアノのための協奏曲*
ラヴェル:組曲《マ・メール・ロワ》
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:クープランの墓

【公演ページ】
https://www.ac-orchestra.com/210501フランスプログラムシリーズ第1回

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