ドリーマーズ・サーカス
北欧伝統音楽をハブに世界と連結する

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ドリーマーズ・サーカス

北欧伝統音楽をハブに世界と連結する

text by 原典子
cover photo ©︎石田昌隆

伝統に裏打ちされた音楽を、いかに現代に生きる音楽として響かせ、次世代へと継承していくか――古楽やクラシックの世界でも問われるテーマを、北欧伝統音楽のシーンで鮮やかに体現しているトラッド・バンドがいる。2009年の深夜、コペンハーゲンのバーに居合わせた3人のトップ・ミュージシャンのセッションからはじまったドリーマーズ・サーカスだ。

ヴァイオリンのルネ・トンスゴー・ソレンセンは、デンマーク弦楽四重奏団の1stヴァイオリンとしても活躍するヴィルトゥオーゾ。シターンなどの撥弦楽器でバンドのリズムを支えるアレ・カーはフィドルの演奏にも優れ、スウェーデンが公式に熟練した伝統音楽家に与える称号「リクスペルマン」を18歳で与えられた逸材。ピアノとアコーディオンでアンサンブルをまとめ上げるニコライ・ブスクは、作編曲家やジャズ・ミュージシャンとしても活躍、映画音楽や舞台芸術の分野でも才能を発揮している。3人それぞれが異なるフィールドで培ってきた感性と技術が交わって生み出されるオリジナリティこそが、ドリーマーズ・サーカスの魅力である。

いまや北欧伝統音楽の最高峰へとのぼりつめたドリーマーズ・サーカスは、2016年の初来日以来、日本公演を重ねるたびに目覚ましい進化を見せてきた。2026年9月に予定されている2年ぶりの来日公演を前に、3人へのメール・インタビューで近況やライヴへの意気込みを聞いた。

自分たちが作った曲で、自分たちのアイデアを表現したい

――前回(2024年10月)の来日での印象深い思い出はありますか?

日本への旅は、どれも忘れられない思い出となっています。2024年はデンマークのロスキレを拠点とするコンテンポラリー・ダンス・カンパニー「アーベンダンス(Aaben Dans)」とのコラボレーション公演を終えたあとに日本ツアーがあり、そこで演奏した楽曲の一部をプログラムに取り入れました。ダンスという文脈を離れても、音楽として十分に機能することが発見できてうれしかったです。

東京のパブで日本のトラッド・ミュージシャンたちと、デンマークの伝統音楽をセッションできたのもよい思い出です。私たちが定期的に日本を訪れるのには理由があります。それは、コンサートに来てくださる方々のあたたかさ、そして音楽や芸術が果たすべき役割――感情を揺さぶり、心と精神を開くことに対する真摯な理解があるからです(名前の表記がない発言は3人の代表コメント、以下同)。

©︎石田昌隆

――ルネさんはクラシック、アレさんは伝統音楽、ニコライさんはジャズと、それぞれ異なるフィールドで活躍していらっしゃいますが、皆さんはどのようにデンマークやスウェーデンの伝統音楽と出会ったのでしょうか?

ルネ 私は両親の影響でフォーク・ミュージックやフォーク・ダンスが身近にある家庭で育ちました。母や父の友人や近所の人たちがフォーク・ミュージックを演奏したり、歌ったり、踊ったりする姿を見て育ったのは幸運だったと思います。ヴァイオリンはスズキ・メソードで習いはじめましたが、コペンハーゲン近郊のロスキレで育ったことで、質の高いクラシック音楽教育を受けられたのも幸運でしたね。

アレ 私の両親はスウェーデンやデンマークのフォーク・ミュージックに深く通じていて、私も幼い頃から両親が結成した家族バンドで演奏していました。成長期にはフィドルをかなり弾いていましたが、スウェーデンのミュージシャン、アレ・モーラーの影響を受け、10代の頃にはノルディック・シターンを弾きたいと強く思うようになりました。やがて私は独自のシターン奏法を確立し、セッションに参加したり音楽仲間を見つけたりするために、コペンハーゲンへと足を運ぶようになりました。ルネと初めて出会ったのもその頃です。その後まもなく、バーでセッションをしている私たちを、ニコライが見つけてくれたのです。あの夜、私たちは音楽的な絆を築きはじめ、歳月を経てその絆はますます強くなっています。

ニコライ 私は幼い頃から、ポップス、ジャズ、クラシック、フォーク・ミュージックなど、あらゆる種類の音楽が好きでした。最初は父からピアノを習いましたが、そこからアコーディオンに移行するのもそれほど難しくはありませんでした。若い頃に巡り合う人々は、自分の音楽の進む方向を形作るものです。私はさまざまなバックグラウンドを持つ多くのデンマーク人ミュージシャンと出会い、親交を深め、長年にわたり彼らと共演する機会を得ることができた、とても幸運な人間だと思っています。

©︎Caroline Bittencourt

――ドリーマーズ・サーカスは『Handed On』※をはじめ、伝統音楽を次世代へ継承・発展させるためのプロジェクトに取り組んでいますが、古くからの伝統ある音楽に現代の要素を取り入れる際に、意識していることはありますか?

※『Handed On』……コロナ禍中に伝統音楽にインスパイアされ作曲した新曲58曲の譜面集を出版し、全曲の演奏動画もYouTubeにて配信するプロジェクト。さらに、このプロジェクトの流れを汲む同タイトルのニュー・アルバム『Handed On』(日本では2024年9月リリース)が発表された。アルバムには、譜面集に収められた楽曲が中心にした13曲が収録されている。

私たちは伝統音楽やクラシック音楽も大好きですが、演奏する曲の大部分は自分たちで作曲したものです。たいていは個々人で作曲しますが、ときには3人で作曲することもあります。特定のスタイルを守ろうとしているわけではありません。音楽は川のようなもので、つねに流れ続けていなければなりません。作家、作曲家、演奏家として、変化や新しい概念に対して心を開くことが重要だと考えています。私たちは自分たちのアイデアを表現したいのです。ときには、ポルスカ、ジグ、リール、ソナホーニングといった古い伝統曲の形式を借りて音楽を彩ることもありますが、多くの場合、自分たちが生み出したメロディが独自のリズムや音色を見出せるようにしています。

私たちが今「古い伝統音楽」と捉えているものも、かつて誰かが作曲したものです。たとえば200年前に作られた曲があるとして、今でこそ作曲者の名前は知られていなくても、作曲された当時は、その音楽は新しく、斬新なものとして響いていたかもしれません。私たちの音楽もまた、現代において新鮮な音楽として受け止められることを願っています。

デンマーク弦楽四重奏団やペッカ・クーシストとのつながり

――ルネさんが1stヴァイオリンを務めるデンマーク弦楽四重奏団は、2025年にデンマークの権威ある音楽賞「レオニー・ソニング音楽賞」を受賞しました。ドリーマーズ・サーカスとデンマーク弦楽四重奏団は、仲が良いそうですね。

デンマーク弦楽四重奏団は、ルネという共通のメンバーがいるだけでなく、それ以上のものを共有している長年の友人たちです。私たちは、演奏する音楽を最高の形で表現するという深い信念を共有しています。音楽制作に注ぐエネルギーや信念と同じくらい、自分たちの活動を伝えることにも力を注いでいます。これまで何度も共演を重ねてきたほか、レコーディング・セッションも共に経験してきました。直近では、2024年にリリースされたデンマーク弦楽四重奏団のアルバム『Keel Road』に収録された楽曲「Stormpolskan」(作曲:アレ・カー)で共演しました。

――ドリーマーズ・サーカスは2026年3月にペッカ・クーシストが指揮するスコットランド室内管弦楽団と共演したそうですが、クーシストは東京都交響楽団の首席指揮者就任が決まり、日本でも非常に注目されています。

ペッカ・クーシストは、絶大な人気を誇る傑出した音楽家です。彼が東京都交響楽団の首席指揮者に就任することはじつに喜ばしいことです。フィンランド出身のペッカは、世界トップクラスのヴァイオリンのソリストであると同時に、民謡や伝統音楽を直感的に理解し、その価値を深く愛しています。

実際、彼は民謡と、私たちが現在「クラシック音楽」として認識しているものとのつながりや類似点を指摘しています。以前、ペッカはアレを招き、BBCプロムスにおいてドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団と共に、ヴィヴァルディの《四季》をフォーク・スタイルで演奏しました。この公演は広くテレビ中継され、バロック音楽に対する人々の認識を変える上で少なからず影響を与えました。その後まもなく、ペッカはドリーマーズ・サーカスにベートーヴェンの楽曲を軸としたコンサート・プログラムを共同で開発しようと提案してきました。私たちは最近、そのプログラムでスコットランド室内管弦楽団とのツアーを行ない、ペッカとの今後の活動も楽しみにしています。

――ほかに今、力を入れているプロジェクトはありますか?

私たちは「Folkets Festival」という北欧音楽のフェスティバルの企画と運営に多大なエネルギーを注いできました。デンマークをはじめとする北欧各国から、私たちが尊敬する友人やミュージシャンたちを招き、コペンハーゲンの象徴的な会場「Vega」で、これまでに2回、フェスティバルを開催しました。Vega内のあらゆる部屋やステージを活用し、昼の時間帯から夜遅くまで会場を貸し切りにしてイベントを繰り広げています。

――ますます多方面に活躍の場を広げていますね。秋に日本でお会いできるのを、心から楽しみにしています!

©︎Søren Lynggaard

公演情報

ドリーマーズ・サーカス 来日公演2026
9月5日(土)16:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール
9月6日(日)14:00 横浜フィリアホール
9月7日(月)16:00 所沢市民文化センター ミューズ キューブホール
9月8日(火)19:00 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
詳細 https://www.plankton.co.jp/dreamers/2026/

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