ケイシー・カンジェローシ
初来日リサイタルに寄せて
世界中のパーカッショニストを魅了する演奏家・作曲家、ケイシー・カンジェローシ。その初来日リサイタルが、2026年9月26日(土)、長久手市文化の家 森のホール(愛知県)で開催される。公演に寄せられた3人のコメントと映像から、その魅力を紹介する。

打楽器音楽の常識を覆す発想
新野将之(マルチパーカッショニスト)
僕が最も敬愛する打楽器奏者、ケイシー・カンジェローシ。
彼の音楽には、「打楽器でここまでできるのか!」という驚きが詰まっています。卓越したテクニックはもちろん、タンバリンやスネアドラムの可能性を極限まで追求し、石を打ち合わせる音、電子音、パントマイムまで音楽の中へ大胆に取り込んでしまう。その発想は、まさに打楽器音楽の常識を覆すものです。
そして何より面白いのは、彼の音楽が「聴く」だけでは終わらないこと。音、身体、動き、空間……すべてをひとつの表現として融合させ、クラシック音楽の枠を飛び越え、新しいエンターテイメントへと昇華させていきます。
アートでありながら、圧倒的に楽しい。
知的でありながら、魂を揺さぶる。
打楽器の未来を切り拓いてきた開拓者、ケイシー・カンジェローシ。その唯一無二の世界を、ぜひ生で体感してください!
身体表現と、超絶技巧の打楽器演奏を一体化
小室敬幸(音楽ライター)
1982年にアメリカで生まれたケイシー・カンジェローシは、打楽器を音だけでなく、奏者の身体や身振りまで含む舞台表現として捉えているユニークな打楽器奏者で作曲家だ。今回のリサイタルで演奏されるティエリー・ドゥ・メイ《Silence Must Be!》は、その志向を象徴する選曲である。メイはローザスを率いるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルら、ベルギーのコンテンポラリーダンスと密接に活動し、音楽的にはルイ・アンドリーセンらに連なるヨーロッパ的なミニマリズムを結びつけた作曲家。そのメイのような音楽の系譜に位置づけられるカンジェローシは、代表作《Meditation No.1》を含む自身の作品でも、打つ、振る、構えるといった動作や反復が、音と同じほど重要な表現になる。ダンスや演劇に通じる身体表現と、超絶技巧の打楽器演奏を一体化させており、今や世界中の若いパーカショニストを魅了している作曲家なのだ。目で見て真価が味わえる音楽なので、日本で初めて行う本格的リサイタルは必聴・必見である!
フィクションとフィジカルのあわい
加藤綾子(ヴァイオリニスト)
YouTubeやInstagram上で切り抜かれる、カンジェローシの身体。バストアップであったり、手元や指先であったりするそれらを画面越しに見たとき、わたしたちは、まずそのディテールに心を奪われる。その身体は多彩な楽器を、ごく当たり前に扱う(ように見える)。ティエリー・ドゥ・メイのスコアを、美しく実現する。石ころもオルゴールも、スティックも、あまりに自然に振る舞うものだから、まるでオブジェクト・シアターを鑑賞しているような感覚に陥る。
そのうえで、彼は切実な演奏者であり続ける。鍛錬された身振りは、どこまでいっても彼自身あるいは他者の音楽を実践し、批評するためにある。その切実さが、きっと、ひとびとの全身を鷲掴む。画面越しではない、実存として長久手に立つ「カンジェローシ」は、音楽というフィクションとフィジカルのあわいを鮮やかに描き、突きつけてくれるだろう。──つまり、生で見るカンジェローシの演奏は、めっちゃすごくてやばいはず、ということです。
公演情報
ケイシー・カンジェローシ
パーカッションリサイタル
TENDRILS2026年9月26日(土)16:00
長久手市文化の家 森のホール(愛知県)
